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美容室が地域の雇用をつくる|主婦・シニア・ブランク美容師が働ける店の条件

「求人を出しても美容師が来ない」という声は、どの地域でも聞かれます。一方で、美容師免許を持ちながら現場にいない人は、働いている人より多くいます。足りないのは人ではなく、その人たちが働ける条件の店です。この記事では、統計で人手不足の構造を確かめ、地域の雇用をつくる店の条件を整理します。

  • 美容師の人手不足の原因を、統計から読み解く
  • 潜在美容師(休眠美容師)の人数と、現場に戻らない理由
  • 主婦・シニア・ブランク美容師が働ける店の条件6つと、愛知の事例

美容師の人手不足の原因は「人がいない」ではなく「働ける条件の店が少ない」

先に結論を書きます。美容師の人手不足は、有資格者の不足ではありません。免許を持つ人の過半が現場の外にいて、その人たちが戻れる働き方を用意している店が少ないことが原因です。

項目 数値 出典
全国の美容所 27万7,752施設(前年度比+1.3%) 厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」
全国の従業美容師 58万8,291人(同+1.5%) 同上
1施設あたりの美容師 2.12人 同上
愛知県の美容所・従業美容師 1万4,325施設・3万3,022人 同上
休眠美容師(推計) 約84万人(2023年時点) ホットペッパービューティーアカデミーの試算
従業員が「不足」と答えた美容業 25.7% 日本政策金融公庫(2023年10〜12月期)

この表から読み取れることは3つあります。

  • 美容師は減っていない。従業美容師は増え続けています。それでも足りないのは、店の数も同時に増え、1店あたり2人前後の小さな店に人が分散しているためです
  • 現場の外に、働いている人より多い有資格者がいる。休眠美容師の推計約84万人は、従業美容師の約58万人を上回ります
  • 4店に1店が人手不足を感じている。採用の競争相手は、隣の店だけでなく、全国27万の美容所です

同じ人を店同士で取り合っている限り、地域全体の人手不足は解消しません。現場の外にいる人が戻れる店を増やすことが、地域の雇用をつくることにつながります。

潜在美容師はなぜ戻らないのか

ホットペッパービューティーアカデミーの「美容サロン就業実態調査2024」では、美容師を辞めた理由の上位に「休みが少ない・労働時間が長いなど、労働時間への不満」と「体調を崩した、体力的に厳しい」が入っています。復職先を選ぶときに重視する点では「希望の日(土日など)の休みがとりやすい」が上位で、2年続けてスコアが上がりました。「給与が良い」は9位です。

戻らない理由を整理すると、次のようになります。

戻らない理由 店の側にある原因
時間が合わない 土日・夕方以降が忙しい営業形態。終業後の練習や会議
体力が不安 1日8時間以上の立ち仕事を前提にしたシフト
技術に自信がない カットからカラー、パーマまで全てを一人でこなす前提
評価の仕組みが合わない 指名数・売上のノルマ、SNS発信の義務

給与を上げる余力がない小さな店でも、時間と担当範囲の設計は変えられます。ここに、地域の店ができることがあります。

主婦・シニア・ブランク美容師が働ける店の6つの条件

条件 具体的な形
1 短時間・少日数のシフトがある 週2〜3日、1日4〜5時間から。扶養の範囲内の働き方を選べる
2 日中で仕事が終わる 最終受付を早めに設定し、退勤時刻を固定する
3 担当する技術が絞られている カラーのみ、シャンプーのみなど、分業で入口を低くする
4 練習・研修が勤務時間内にある 営業後の無給の練習を前提にしない
5 急な休みを店として吸収できる 複数人で同じ業務を担当し、1人が休んでも予約を回せる
6 年齢と家庭の事情を前提にしている 50代・60代のスタッフがいる。学校行事や通院を言い出しやすい

6つに共通するのは、「フルタイムで何でもできる美容師」を前提にしないことです。前提を変えると、採用の対象は、求人サイトを見ている転職希望者から、地域に住んでいる有資格者全体に広がります。

愛知の事例:白髪染め専門店が生んでいる雇用

当法人が活動の一つとして普及を支えている白髪染め専門店「カラーのちから」は、愛知県を中心に、出店決定を含め31店舗(2026年9月時点)まで広がっています。

この業態は、上の6つの条件のうち、2と3を店の成り立ちとして満たしています。

  • メニューが白髪染めに絞られており、スタッフが担当する技術の範囲が限られる
  • 主な利用者が日中に動ける中高年で、来店は午前に集中する傾向がある。日中だけの勤務を組みやすい
  • お客様が特定の美容師を指名して通う店ではないため、指名数で評価される働き方になりにくい

1店舗あたりの月間客数は平均で約270人(既存15店の平均・2026年夏時点)。小さな店でも、地域に複数の働き口が生まれます。

課題として残っていること

  • 美容師の確保は、この業態でも簡単ではない。メニューを絞っても施術できるのは美容師免許を持つ人だけで、出店の計画が採用の見通しに左右されます
  • 短時間勤務の人が多いほど、シフトの調整は難しくなる。急な休みを吸収するには人数の余裕が要り、人件費とのバランスが課題になります
  • 技術を広げたい人には物足りない。カットやデザインカラーを続けたい美容師の受け皿にはなりません
  • 店ごとの差がある。同じ業態でも、客数や再来の状況は店によって開きがあり、働きやすさも店長・オーナーの運営に左右されます

専門店だけが答えではありません。一般の美容室でも、平日昼間だけのカラー担当を置く、シャンプーとカラー塗布を分業にする、といった形で同じ条件をつくることができます。

地域ぐるみで取り組めること

潜在美容師の掘り起こしは、1店の求人だけでは進みません。立場ごとにできることがあります。

立場 できること
美容室オーナー 短時間・担当限定の求人枠を1つ作る。見学だけでも歓迎すると明記する。求人を地域の掲示板や学校・園の周辺など、生活動線に出す
美容組合・業界団体 復職希望者向けの技術講習を日中に開く。受け入れ可能な店の一覧を作る
行政・就労支援機関 子育て世代・シニアの就労支援の窓口で、美容師免許などの資格を持つ人に地域の受け入れ先を案内する
当法人のような団体 復職の事例と働ける店の条件を調べ、記事や資料として公開する

まとめ

美容師の人手不足の原因は、有資格者の不足ではなく、現場の外にいる推計約84万人が戻れる条件の店が少ないことにあります。
時間と担当範囲の設計を変えれば、小さな店でも主婦・シニア・ブランク美容師の働き口をつくれます。
愛知の白髪染め専門店はその一例ですが、美容師の確保やシフトの難しさなど課題も残っており、一般の美容室でも同じ条件づくりは可能です。

この記事は一般社団法人サロンシードが発行しています。当法人は、愛知県を中心に美容室の経営・雇用・集客を支える活動をしています。

本記事で紹介している「カラーのちから」は、株式会社graciautoが本部運営に関わる白髪染め専門店です。同社の代表は当法人の理事を務めており、当法人の関連企業にあたります。当法人は、愛知県で広がったこの取り組みを、美容室の新しい業態・雇用・美容師の復職の事例として紹介しています。

出典

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