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愛知で白髪染め専門店が約30店に広がった理由|5つの意義と課題

白髪染め専門店が増えている理由は、流行ではなく、利用者・美容室オーナー・美容師の三者がそれぞれ抱えていた困りごとが同じ場所で重なったことにあります。この記事では、公的統計と業界調査で背景を整理したうえで、愛知県で約30店まで広がった白髪染め専門店の事例を、意義と課題の両面から紹介します。

  • 白髪染め専門店が増えている理由を、利用者・オーナー・美容師の三方向から整理
  • 愛知で約30店に広がった事例が持つ5つの意義
  • うまくいかなかった点と、この業態が向かないケース

白髪染め専門店が増えている理由は「三者の困りごと」が重なったから

先に結論を書きます。白髪染め専門店が広がった理由は、次の3つが同時に起きているためです。

立場 困りごと 専門店が応えている点
利用者(中高年) 白髪染めは数週間おきに長年続く。費用と時間の負担が積み重なる 染めることに絞り、短時間・手の届く価格にしている
美容室オーナー 店は増え続け、客数は減る。自分が現場に立てなくなった後の備えがない メニューを絞ることで、オーナーが施術に入らなくても回る店をつくりやすい
美容師 免許を持ちながら現場を離れた人が多い。長時間労働と技術のブランクが壁 カット・パーマがなく、日中の短時間勤務を組みやすい

なお、白髪染め専門店やカラー専門店の店舗数そのものを示す公的統計はありません。美容所の届出は業態を区別しないためです。以下では、確認できる周辺の数字から背景を見ていきます。

利用者側:染める期間が長く、物価高で通い方が変わってきた

株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」(2025年7月調査・本調査1,031人)によると、女性が白髪対策を始めた年齢は平均42.9歳、続けたい年齢は平均69.6歳でした。単純に引き算すると、四半世紀を超える付き合いになります。

同調査では、物価高の影響で理美容室での白髪染めの頻度が「減った」人は15.5%で、「増えた」9.2%を上回りました。一方、自宅での市販ヘアカラーは「増えた」19.0%が「減った」11.1%を上回り、サロンと自宅の併用は19.1%(前年から3.3ポイント増)です。

  • 理美容室での白髪染め(女性・1回あたり平均):6,228円
  • カラー専門サロンでの白髪染め(女性・1回あたり平均):3,336円

「美容室に毎回通うのは負担だが、全部を自分で染めるのも大変」という層にとって、専門店が中間の選択肢になっていることが数字から読み取れます。

オーナー側:店は増え、客数は減っている

厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」(2025年10月公表)では、全国の美容所は27万7,752施設、従業美容師は58万8,291人で、いずれも増加が続いています。1施設あたりの美容師は2.12人。小さな店が増え続けている構図です。

日本政策金融公庫の「生活衛生関係営業の景気動向等調査」(2024年1〜3月期)では、美容業の経営上の問題点として最も多かったのが「顧客数の減少」(52.3%)でした。厚生労働省の「美容業の振興指針」も、美容所の多くが個人・家族経営で、営業者の高齢化と後継者問題を抱えていると指摘しています。

美容師側:免許を持つ人の半数以上が現場にいない

厚生労働省の資料によると、美容師免許の登録者数は累計で約140万人、これに対し従業美容師は約57万人です(同資料掲載の最新年度)。ホットペッパービューティーアカデミーは2023年時点の試算として、免許を持ちながら美容師として働いていない「休眠美容師」を約84万人と推計しています。

愛知で約30店に広がった白髪染め専門店の事例

当法人が活動の一つとして普及を支えているのが、愛知県を中心に展開する白髪染め専門店「カラーのちから」です。出店決定を含め31店舗(2026年9月時点)まで広がりました。

業態 白髪染めに絞った専門店。カット・パーマは扱わない
展開地域 愛知県が中心(名古屋市内、一宮・岩倉・津島・愛西・日進・岡崎など)。一部は岐阜県
運営の形 本部と各店のオーナーによるフランチャイズ方式。既存の美容室オーナーが2業態目として出店する例がある
価格の目安 根元染め2,750円から(2026年9月時点の各店公式サイトの表示。店舗やメニューにより異なる)

既存の15店を平均すると、1店舗あたりの月間客数は約270人、うち新規は約22人、次回予約率は約52%です(2026年夏時点・各店の売上日報を当法人の運営協力先が集計)。来店の大半は再来のお客様で、来店時間は午前に集中する傾向があります。仕事帰りの夜ではなく、日中に動ける中高年の生活時間に合った店だといえます。

この事例が持つ5つの意義

当法人がこの取り組みを紹介しているのは、店舗が増えたからではなく、地域の美容室が抱える課題に対して5つの答えを同時に示しているためです。

意義 現場で起きていること
1 美容室オーナーの新しい業態 既存店の経験を活かし、小さな面積・少ないメニューで2店舗目を持てる
2 オーナーの引退後も続く仕組み オーナー自身の指名客に頼らない店なので、ハサミを置いた後も店が続く
3 地域の雇用 日中・短時間の勤務が組みやすく、主婦やシニアが働ける職場が地域に増える
4 ブランクのある美容師の現場復帰 技術の範囲がカラーに絞られるため、離職期間が長い人でも戻りやすい
5 中高年の生活美容 手の届く価格で、美容師による白髪染めを続けられる場所が生活圏にできる

1と2はオーナーの課題、3と4は働き手の課題、5は利用者の課題です。冒頭の「三者の困りごと」にそのまま対応しています。

うまくいかなかった点・向かないケース

広がった事例にも、うまくいかなかった点があります。隠さず書きます。

うまくいかなかった点

  • 新規が集まらない店がある。同じ看板でも、月の新規来店が平均を大きく下回る店が出ています。立地や看板の見え方、店名に地名が入っているかどうかで差がつきました
  • 交通量が多ければ新規が多いわけではなかった。前面道路の通行量と新規客数が逆転している店の組み合わせがあり、「人通りの多い場所に出せばよい」という見立ては当てはまりませんでした
  • 次回予約率は平均で約5割。店ごとの差が大きく、声かけの仕方が店ごとに揃っていません
  • 日々の数字の記録が揃わない。売上日報の入力が抜ける店があり、課題に気づくのが遅れた例があります

向かないケース

  • デザインカラーや高単価メニューで技術を売りたいオーナー。専門店は「絞って続けてもらう」店であり、客単価を上げていく店ではありません
  • 夕方以降の来店が中心の商圏。主な利用者が日中に動ける中高年のため、夜型の立地では客層が合いにくくなります
  • 美容師を確保する見通しがない場合。メニューを絞っても、施術するのは美容師免許を持つ人です
  • オーナーが数字を見る時間を取れない場合。現場に立たない分、客数・再来・次回予約を見て判断する役割が残ります

他の地域で参考にするときに確認したい条件

愛知の事例がそのまま他県で成り立つとは限りません。検討の前に、次の点を自分の地域で確かめてください。

  • 生活圏に50〜70代の人口がどれだけいるか(市区町村の年齢別人口で確認できます)
  • 日中に来店しやすい場所か。駐車場、スーパーや医院など日常の動線の近くか
  • 地域に、短時間なら働きたい美容師免許保持者がいそうか
  • 既存の美容室の常連客と競合せず、すみ分けができるか
  • 店の前を通る人から、何の店か一目で分かる見せ方ができるか

まとめ

白髪染め専門店が増えている理由は、長く染め続ける利用者、客数減と高齢化に向き合うオーナー、現場を離れた美容師の三者の事情が重なったことにあります。
愛知で約30店に広がった事例は、業態・引退後の備え・雇用・復職・生活美容の5つに同時に答えています。
一方で、新規集客の差や次回予約率のばらつきなどの課題も残っており、どの地域・どのオーナーにも合う形ではありません。

この記事は一般社団法人サロンシードが発行しています。当法人は、愛知県を中心に美容室の経営・雇用・集客を支える活動をしています。

本記事で紹介している「カラーのちから」は、株式会社graciautoが本部運営に関わる白髪染め専門店です。同社の代表は当法人の理事を務めており、当法人の関連企業にあたります。当法人は、愛知県で広がったこの取り組みを、美容室の新しい業態・雇用・美容師の復職の事例として紹介しています。

出典

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